2021年5月に「ジクトルテープ75㎎」が発売されました。
本剤はタイトル通り経皮吸収型NSAIDsの中で初のがん性疼痛に適応を持った製剤であり期待がもてる薬剤と考えられます。
今回はジクトルテープについて既存の経皮吸収NSAIDsとの違い等を踏まえてまとめていきます。
成分、用量
ジクトルテープの成分は「ジクロフェナクナトリウム」です。
既存の薬剤と成分に違いはありませんが大きな違いはその用量です。
既存のジクロフェナクナトリウムテープ製剤の用量は15㎎なのに対してジクトルテープは5倍の75㎎配合されています。
用法
既存のジクロフェナクナトリウムテープは「1日1回患部に貼付」と記載があるだけになりますが、ジクトルテープの用法は下記の通りです。
通常、成人に対し、1日1回、2枚(ジクロフェナクナトリウムとして150mg)を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部又は大腿部に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替える。なお、症状や状態により1日3枚(ジクロフェナクナトリウムとして225mg)に増量できる。
ジクトルテープ75㎎添付文書より
用量が高容量になったことなどから用法がしっかり決まっている印象を受けます。
1日1回というのに代わりはありませんが1回2枚、最大3枚と使用方法が特殊です。さらにがん性疼痛であることから患部に貼付の記載がなく貼りやすい部分へ貼付する形になります。

上記は添付文書に記載がある部位別のジクロフェナクを75㎎換算した血中濃度のデータになりますが少し部位によってばらつきを感じます。
しかし、健康成人において腰部を基準として分布はどの部位においてもおおむね同等であると「臨床に関する概括評価」へ記載があることから投与部位は患者さんに合わせて貼付部位を選ぶことが可能のように感じます。
剤型
ジクトルテープはテープ剤のため貼付はパップ剤に比べ簡易的に行えると思います。

上図はジクトルテープのサイズです。70㎜×100㎜と標準的なサイズをしています。
同じサイズの例として下記のような薬剤があります。
モーラステープ20㎎
ジクロフェナクナトリウムテープ15㎎(各社サイズ共通)
ロキソプロフェンナトリウムテープ50㎎(各社サイズ共通)
このサイズを2~3枚を毎日貼り続けるのは場所を考えないと少し邪魔に感じる可能性があると感じました。
ちなみに 「臨床に関する概括評価」 によると2枚を別の部位に1枚ずつ貼っても同等であると結論付けられているので2か所に貼付する場合でも問題ないと考えられます。
禁忌、副作用

上図はジクトルテープの禁忌です。
ジクロフェナクナトリウムテープ15㎎、30㎎製剤では過敏症とアスピリン喘息の記載しかなかったのに対して高容量、全身に作用させることから多くの禁忌、副作用が記載されています。
ちなみに禁忌はボルタレン錠25㎎とほぼ同じ記載となっています。
NSAIDsであることから消化性潰瘍、腎機能に注意が必要なのは変わらないです。
副作用についても錠剤とほぼ同じ副作用が報告されていますが、ボルタレンテープなどと比べて頻度が高いのが「適用部位そう痒感」が5%以上と少し高いことです。
ジクトルテープは1回で2枚張ることから皮膚に関する副作用に注意するべきと考えられます。
その他注意
貼付上限が3枚になっており、3枚で経口薬の通常用量と同程度に値するためと記載があるため処方時のコメント等に注意が必要だと考えられます。
貼付部位の注意としては他剤と大きな違いとしては湿疹、皮膚炎が見られる部位以外にも放射線照射部位を避けるように記載があるので注意が必要です。
また、テープが剥がれた場合は貼りなおすのではなく新しいものを使用し、次の貼り替え時には全て新しいものにすると記載があります。
途中で新しいものを使用しても混同を防ぐために全て貼り替えとなっていると考えられます。
ジクトルテープの包装単位は1袋に1枚入りで140枚/箱なので注意が必要です。
がん性疼痛というところからフェントステープなどと同じ包装方法を用いてると覚えました。
まとめ
貼付剤で初の経皮吸収型NSAIDsであることから非常に注目の薬剤です。
2021年5月に発売されたためまだ1年後に処方制限が解除になれば使用の幅が広がると考えられます。
さらに2021年8月に「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎への効能追加」の申請が提出されいるのでこちらも注目していきたいです。
現在薬価がボルタレンテープ30㎎で19.5円なのに対してジクトルテープ75㎎は156.5円と高価なため現状では使用するのが限定的になると考えられます。(2021年4月薬価)
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