来月よりダーブロック錠®(ダプロデュスタット)を新規採用することになり先日それに対する勉強会がオンラインで行われたのでそれに付随していろいろまとめてみました!
薬理作用
薬理作用はHIF-PH阻害作用です。
この作用点が発見されたのは最近で2019年にノーベル賞を受賞しています!
HIF-PHは低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素の略でダプロデュスタットはこの酵素を阻害します。
HIF(低酸素誘導因子)は低酸素状態になった時に赤血球などの血球成分を増やすよう指示を出す因子です。
HIFのイメージとしては高地トレーニングです。低酸素の環境でトレーニングを行うと赤血球が増えて酸素を多く取り込めるようになるというのはイメージがつくと思います。
HIF-PHはHIFの調整酵素でありダプロデュスタットはこれを阻害することで結果的にHIFを誘導します。
適応
適応は腎性貧血です。
腎性貧血に適応がある薬剤として今まではESA(赤血球造血刺激因子製剤)という注射製剤しかありませんでした。(商品名はネスプ、ミルセラなど)
ESA製剤は自己注射ができず2~4週間に1回通院して看護師さんに投与してもらうと患者さんに負担がかかるものでした。
HIF-PH阻害剤は内服薬であり1日1回内服するだけでいいので負担は大きく軽減されると予想されますが、まだ新薬なので2週間しか処方できないのが現状のデメリットだと思います。
2019年にHIF-PH阻害薬は発売されていましたが適応は「透析施工中の腎性貧血」と透析前の保存期の患者さんには適応が無かったですが今回この薬剤の発売により腎性貧血と適応は広がりました。
用法用量
添付文書より
- 保存期慢性腎臓病患者
- 赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合
通常、成人にはダプロデュスタットとして1回2mg又は4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。 - 赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合
通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
- 赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合
- 透析患者
- 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
ESA製剤未使用の場合でヘモグロビンが9.0g/dl未満で4mg、以上で2mgから開始とさらに細分化されています。
ヘモグロビンの数値で少し違いはありますが基本的に透析の有無関係なく4mgから開始で最大24mgは共通です。
ちなみにメーカーさんに聞いたところESA製剤からの切り替え時にダプロデュスタットの服用開始時期は特に決まってないみたいでESA製剤を投与した次の日から開始でも最悪大丈夫みたいです。
投与量調節が必要な場合には、下表を参考に1段階ずつ増量又は減量を行うこと。
また、休薬した場合には、休薬前より少なくとも1段階低い用量で投与を再開すること。なお、用量調節を行った場合には、少なくとも4週間は同一用量を維持することとするが、ヘモグロビン濃度が急激に(4週以内に2.0g/dLを超える)上昇した場合には、速やかに減量又は休薬すること。
段階 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
投与量(mg) | 1 | 2 | 4 | 6 | 8 | 12 | 18 | 24 |
上記のように用量の調節は4週間隔と短期間に投与量を上げることはできないみたいです。
また、ESA製剤を高用量で使用していた場合でも開始用量は4mgであり開始時に逆に数値が下がってしまう場合があるためそこには注意が必要です。
副作用
血栓塞栓症(0.8%)
網膜出血
高血圧
(悪性腫瘍)
造血作用があることから血栓塞栓症の頻度が高めに感じます。
その他網膜出血や高血圧と副作用には記載はないのですが注意の部分に血管新生を促進することから悪性腫瘍を増悪させる懸念があるみたいです。
薬価
規格(mg) | 薬価(円/錠) |
1 | 105.4 |
2 | 185.8 |
4 | 327.4 |
6 | 456.1 |
薬価は上記の通りですがこれでは分かりにくいので比較対象としてESA製剤と比べてみます。
ミルセラ®
100μg 17947円/筒
ネスプ®
60μg 8782円/筒
ESA製剤は維持用量のだいたい真ん中の100、60μgを比較対象とします。ダプロデュスタットは4mgを4週服用したとします。
ミルセラの投与間隔が4週と一番長いので4週分(28日)の費用で計算してみます。
商品名 | ダーブロック錠® | ミルセラ注® | ネスプ注® |
価格(円) | 9167.2 | 17947 | 17564 |
ダーブロック錠を4mg服用でいければ費用は安く済むみたいですね。
ちなみに次の増量の6mgでは12770.8円、8mg(2mg+6mg)では17973.2円とESA製剤と同等になるみたいですね。
まだESA製剤との換算等はないみたいなので一概に内服だからコストが抑えられるかはまだ不明な点が多いです。
まとめ
腎性貧血に対する内服薬が出たのは患者さんやスタッフにとって嬉しい点が多いことが分かりました。
しかし薬剤師の観点からみると複数規格在庫する必要がありそう(当院は3規格採用になりました)なので規格間違えには十分注意したいです。
ESA製剤高用量の患者さんの切り替えの場合にヘモグロビン数値が下がる懸念があることから職場で処方が出た場合に経過を積極的に追っていきたいと思います!
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