高カリウム血症改善薬として新しくロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)が発売されました。
ロケルマの使用方法や注意点を他の類似薬との違いなどを踏まえてまとめてみました。
効能効果
適応:高カリウム血症
高カリウム血症であれば透析など関係ないため幅広い場面で使用することができます。
例えば抗がん剤治療中の高カリウム血症でも用いることができます。
注意点としては緊急性のある高カリウム血症には使用することができません。(効果発現まで約1時間ほどかかるため)
その場合にはロケルマではなく
透析
GI療法
などを使用します。
用法用量
本剤は少し使い方が難しいので注意してください。
ロケルマは懸濁製剤のため45mlの水に懸濁して服用します。
45mlというのは水分制限を受けている患者さん向けに使用する際の最低水分量のため水分制限のない患者さんでは飲みやすい水分量で服用して問題ありません。
通常の使い方
初回用量1回10gを水で懸濁し1日3回 2日間経口投与し、必要に応じて最長3日間まで投与できます。
その後維持量として1回5gを1日1回服用。最高用量1回15g
添付文書では「本剤投与開始3日目に1回10gを1日3回投与する場合には3日目の投与前に血清カリウム値が治療目標に達していないことを確認すること。
また、本剤投与開始3日後にも血清カリウム値が目標に達していない場合は他の治療法を検討すること」
3日目を投与するかの可否での採血を行わなかった場合に保険上切られることはないそうですが低カリウム血症の発現率からほぼ確実に行うべきだと思います。
一度に3日分で処方が来た場合には添付文書上疑義が必要だと思います。
この薬が処方された際には初回かどうかで使用方法が大きく変わるので患者さんへの聞き取りなどが重要になってくると思います。
血液透析患者
1回5gを水で懸濁し非透析日に1日1回経口投与する。最高用量は1日1回15g
通常量の場合と違って初回用量の設定が無いのですが服用時期が非透析日だけなので一包化している患者さんや理解度があまり高くない患者さんでは注意が必要だと思います。
薬効薬理
ロケルマはカリウムを選択的に交換を行い、高カリウム血症治療に用います。
ロケルマには規則正しい格子状の穴が沢山あり、ナトリウムイオンと水素イオンをカリウムイオンとアンモニウムイオンを交換します。
穴のサイズは3Åであり、これがカリウムイオンがぴったり入るサイズになっているためカリウムへの選択制が高いとされています。
カリウムイオンを交換する際にpHの影響を受けやすく、胃酸酸性下ではほとんどカリウムを交換することはできず、腸管などpHが4.5前後で交換能が発揮されます。
ここで注意してほしいのが胃酸酸性下ではカリウムはほとんど交換できませんが水素イオンを吸着することによりpHを上昇させてしまいます。そのためpHに関わる薬剤がいくつか併用注意になっています。
副作用
カリウムを交換するため低カリウム血症に注意が必要です。
発現頻度が11.5%と非常に高いので初回投与や用量調節時などは特に注意してください。
ローディングの際に発現しやすいかどうかは確認中です。
後述しますがロケルマはナトリウムを多く含んでいるためうっ血性心不全の患者さんなどナトリウム制限のかかっている患者さんには注意が必要です。
他剤との比較
高カリウム血症治療薬のうち陽イオン交換樹脂製剤には他にもカリメート、アーガメイト、ケイキサレートがあります。
商品名 | ロケルマ | ケイキサレート | カリメート | アーガメイト |
成分名 | ジルコニウムシクロ ケイ酸ナトリウム | ポリスチレン スルホン酸ナトリウム | ポリスチレン スルホン酸カルシウム | ポリスチレン スルホン酸カルシウム |
用法用量 | 初回:1日3回 1回10g 維持:1日1回 1回5g 透析は別 | 1日(成分量)30gを 2~3回に分ける | 1日(成分量)15~30gを 2~3回に分けて服用 | 1日(成分量)15~30gを 2~3回に分けて服用 |
禁忌 | なし | なし | 腸閉塞の患者 | 腸閉塞の患者 |
ナトリウム含量 (食塩相当量) | 80㎎/g ( 0.2g ) | 100㎎/g ( 0.254g ) | ー | ー |
低カリウム血症 発現率 | 11.5% | 頻度不明 | 0.1~5%未満 | 頻度不明 |
用法の違い
用法はロケルマだけ初回の使用方法が複雑です。
維持量になれば他剤と比べ、ロケルマは1日1回の服用で良いのでコンプライアンス的にはメリットになる場合があると思います。
禁忌の違い
カリメート、アーガメイトは禁忌に腸閉塞の患者があります。
ケイキサレートには腸閉塞の禁忌はありませんが体内の水分により約92%増加するため注意が必要です。それに対してロケルマは約17%減少したと報告があります。
そのためロケルマは腸閉塞の危険性は低いと考えられます。
ナトリウム含有量の違い
ロケルマ、ケイキサレートと共にナトリウムを多く含有する医薬品のため心不全の患者さんなどナトリウムに制限のある方には注意が必要です。
ナトリウム制限のない患者さんの場合であっても食塩の食事摂取基準の目標量は男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満です。
ロケルマを服用するだけで通常量で食塩として1日6g服用してしまうので注意が必要です。
まとめ
ロケルマは初回のローディングが少し難しいですが他剤に比べて腸閉塞などを起こしにくいだけでなくカリウムを選択的に吸着するため低カルシウム血症などの副作用が起きにくいのは大きなメリットだと思います。
しかし食塩量がケイキサレートほどではありませんが多く含まれているので循環器系に疾患を抱えている方は使いにくい場面もあるかもしれません。
陽イオン交換樹脂製剤が今回新しく追加されたので今後選択の幅が広がると思うので使い分けなど注意してみていきたいと思います。
ロケルマ 製品情報→ http://med.astrazeneca.co.jp/product/LOK.html#
ケイキサレート 添付文書→ https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2190009R1025_1_04/
アーガメイト 添付文書→ https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2190016Q2026_1_07/
カリメート 添付文書→ https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2190016S1027_1_09/
食塩相当量計算式 → https://jp.glico.com/navi/dic/dic_30.html
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