ケモのレジメンごとに概要、注意点などを自分なりにまとめてみました。
適応
・治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
・結腸癌における術後補助化学療法
・胃癌
レジメン内容
XELOXはゼローダ(カペシタビン)の内服薬とエルプラット(オキサリプラチン)の点滴を併用するレジメンになります。
投与スケジュールは下記の通りです。初日の午前中にオキサリプラチンを投与し夕食後からカペシタビンを内服し、15日目の朝まで内服後1週間休薬します。
合計21日間を1コースとし、8コース前後を目安に投与していきます。

用法用量(ゼローダ)
【ゼローダ添付文書参照】
ゼローダの投与量は全て体表面積(㎡)より算出されます。
使用用途によってA法~E法までありますが、XELOX療法ではC法を用います。
例外的に「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」ではC法かE法を使用します。
体表面積 | 1回投与量 |
1.36㎡未満 | 1200mg |
1.36㎡以上1.66㎡未満 | 1500mg |
1.66㎡以上1.96㎡未満 | 1800mg |
1.96㎡以上 | 2100mg |
体表面積 | 1回投与量 |
1.31㎡未満 | 1200mg |
1.31㎡以上1.69㎡未満 | 1500mg |
1.69㎡以上2.07㎡未満 | 1800mg |
2.07㎡以上 | 2100mg |
上記より算出した用量を1日2回朝夕食後30分以内に服用します。
臨床上問題となる食事の影響なないそうです。(ゼローダIFより)
予断ですがゼローダ錠の規格は300mgしか存在せず、1回投与量も300の倍数で設定されているため調剤時に奇数個の錠数になることはない(必ず1日2回のため)ので注意が必要です。
用法用量(エルプラット)
【エルプラット添付文書参照】
エルプラットもゼローダと同様に投与量は体表面積(㎡)より算出されます。
エルプラットには投与量の基準としてA法、B法があります。
A法は投与サイクルが13日でありXELOX療法では使用しません。よってB法を主に用います。
B法の投与量はオキサリプラチンとして130mg/㎡で算出します。
上記投与量をXELOX療法初日に投与します。
減量基準
【ゼローダ適性使用ガイド 中外製薬より】
治療中の場合はグレードが0-1へ軽快するまで休薬を行います。そして治療を再開する場合には減量基準に従って投与量を調節します。
治療再開時(2コース目以降)には下記のような投与可能基準を満たすまで休薬することとなっています。(エルプラット添付文書より)
種類 | 程度 |
好中球数 | 1500/m㎥ |
血小板数 | 75000/m㎥ |
XELOX療法における減量基準には血液毒性、非血液毒性の二種類がありそれぞれの減量基準は下記の通りです。
(非血液毒性は手足症候群、末梢神経障害など血液検査以外の項目になります。)


ゼローダの減量段階は下記の表の通りになります。

原則として減量した場合に再び増量はしないこととされています。
副作用
手足症候群
ゼローダによる細胞毒性により起こる副作用です。
ゼローダ添付文書上では頻度不明に分類されますがIFを参照すると59.1%と高い頻度で発現することが報告されているため注意が必要な副作用の1つです。
症状としては手足がピリピリ、チクチクする。重症化すると痛みを伴う。
感覚だけでなく皮膚が赤く腫れたり、ひび割れ、水泡が生じる症状をさします。
対応としてはハンドクリームなどを用いて手足の乾燥を防ぐことが大切だといわれています。
保湿に加え、手足への刺激をなるべく減らすようつとめるのも効果的と言われており、熱いお風呂には入らない、長時間歩かない、きつい靴を履かないなどの対策を心がけると良いとされています。
また、皮膚が赤く腫れたりする場合があるため患者さんへXELOX療法の説明をする時に治療が開始する少し前から自分の手足の色などを観察する習慣をつけるよう説明を行うと早期発見につながると思います。
Grade | 臨床領域 | 機能領域 |
1 | しびれ、皮膚知覚過敏、ヒリヒリ・チク チク感、無痛性腫脹、無痛性紅斑 | 日常生活に制限を受けることはない症 状 |
2 | 腫脹を伴う有痛性皮膚紅斑 | 日常生活に制限を受ける症状 |
3 | 湿性落屑、潰瘍、水疱、強い痛み | 日常生活を遂行できない症状 |
末梢神経障害
エルプラットによる副作用の1つです。手足症候群と症状がかぶる部分があり、実際に明確に分類するのは困難な場合もあるそうです。
・急性末梢神経障害
点滴投与直後から2日以内に発現する場合が多く、冷たいものを触ると誘発されます。そのため冬季にXELOX療法を行う時はなるべく温かい服装で来院するよう説明することが大切です。
症状としては手足、口の周りがしびれたりチクチクする。食べ物が飲み込みにくいなどがありますが通常数日で回復します。
・持続性末梢神経障害
治療を繰り返し、長期化すると手足のしびれや痛みによりボタンがはずしにくいなど手先の作業が困難になったり、歩きにくくなってしまい転倒してしまうなど日常に影響がでる場合があります。
対策としては急性、持続性共に共通であり、基本的には冷たいものを避けるのが大切です。
エアコンの風を直接浴びない、冷蔵庫内の物を直接触らない、外出する際はしっかり防寒対策を行う、氷が入った飲み物を避けるなどがあります。
冷蔵庫内などは現実的に無理なので基本的に手袋を着用すると良いといわれています。
また、洗い物をする際にも手袋の着用が効果的であるといわれています。
Grade | 末梢性運動 ニューロパチー | 末梢性感覚 ニューロパチー |
1 | 症状が無い 臨床所見、検査所見のみ 治療を要さない | 症状が無い 深部腱反射の低下 または知覚異常 |
2 | 中等度の症状がある 身の回り以外の 日常生活動作の制限 | 中等度の症状がある 身の回り以外の 日常生活動作の制限 |
3 | 高度の症状がある 身の回りの日常生活動作の制限 補助具を要する | 高度の症状がある 身の回りの日常生活動作の制限 |
4 | 生命を脅かす 救急処置を要する | 生命を脅かす 救急処置を要する |
消化器症状
下痢、便秘、吐き気、嘔吐などの消化器症状があります。
IFによると悪心(82.9%)、下痢(61.0%)、嘔吐(40.9%)、口内炎(37.2%)、便秘(23.2%)となっています。
注意するべきは半数以上に発現する下痢であるといえます。
重症化した場合に脱水症状につながる場合があるためこまめな水分補給が必要です。説明する際には水分補給をこまめに行い、補給が行えないほどの下痢である場合にはすぐに医療機関に連絡するよう説明する必要があります。
食事においては一度に多く摂取した場合消化器官に負担がかかりすぎてしまうため少量ずつ摂取するようにし、熱いものなどは少し冷ますなど刺激をなるべく抑えてから摂取するように説明を行う必要があります。(同時に口内炎対策にもなります)
ゼローダIF →リンク
骨髄抑制
白血球減少
白血球の減少により感染症の感染リスクが高まります。患者さんへはしっかり手洗いうがいを行うように説明し、大人数との接触(宴会等)や人ごみを避けてリスクを減らすよう努める必要があります。
万が一発熱した場合(ゼローダハンドブックでは38℃以上)には医療機関へすぐに連絡を行い対応を求める必要があります。
赤血球減少
赤血球の減少により貧血傾向になる場合があります。
栄養をバランスよく補給するのが大切です。
立ち上がる時などに起こる立ちくらみに注意し、立ち上がる時はゆっくりどこかにつかまりながら行うように説明する必要があります。
血小板減少
血小板の減少により出血傾向になる場合があります。
過度な運動などは避け、外傷、打撲などに注意し、日ごろから痣などができていないか確認する必要があります。
日常では歯磨きで磨きすぎによる出血には特に注意が必要です。
その他注意
配合変化
エルプラットを生食で希釈した場合、エルプラットは分解してしまうため、必ず5%ブドウ糖を用いて希釈を行います。
催吐リスク
エルプラットの催吐性リスクは中等度(催吐頻度30~90%)、ゼローダは軽度(10~30%)に当たるため前投薬に吐き気止めを投与する必要があります。
抗がん剤を併用する場合催吐リスクが高い方に準じて制吐剤を選択するため今回は中等度に準じて選択されます。
ガイドラインにおいてカルボプラチンは基本的には中等度のため5-HT₃受容体拮抗薬+デキサメタゾンを併用する方法が推奨されています。
しかし、AUC≧4では5-HT₃受容体拮抗薬+デキサメタゾン+アプレピタントを併用する方法が推奨されています。
コメント