2020年11月にフォシーガが慢性心不全に対する適応を追加しました。
それまでは1型、2型糖尿病への適応のみだったので違いなどを踏まえてまとめてみました!
用法用量
<1型糖尿病>
インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。
<2型糖尿病>
通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる
<慢性心不全>
通常、成人にはダパグリフロジンとして10mgを1日1回経口投与する。
(1型糖尿病を合併する患者では、糖尿病治療に精通した医師あるいはその指導のもとで、適切な対応が行える管理下で5mg1日1回から投与を開始すること。また、経過を十分に観察しながらインスリン量を調整した後、10mg1日1回に増量すること。5mg1日1回では慢性心不全に対する有効性は確認されていない。)
今回注意したいのが慢性心不全で使用する場合初回用量から10㎎になっていることです。(1型の方は5㎎から)
糖尿病で使用する場合の5㎎と違い、最大量なので初回でフォシーガの処方が出た場合に慢性心不全の可能性を疑う必要があります。
フォシーガには5㎎と10㎎の規格がありますが保険上は5㎎2錠でも問題ないそうです。
しかし、5㎎は195.1円、10㎎は290.5円と1回あたり100円近い差が出てしまうため患者さんの費用面から10㎎錠を使用した方がいいと思います。
薬効薬理
フォシーガの成分はダパグリフロジンであり、分類としてはSGLT2阻害剤に当たります。
尿細管における糖の再吸収を担うSGTL2を阻害することにより糖を尿中に排泄することにより血糖を下げます。
このとき糖が再吸収されないことにより尿中の浸透圧が上がり、水分も同時に排泄されます。今回慢性心不全に適応をとった理由の1つにこの水分排泄機構があるそうです。
しかし、SGLT2阻害剤は血糖依存的に作用するためもともと血糖値があまり高くない慢性心不全のみ罹患している患者さんでは水分排泄をこの薬だけで担うのは難しい場合があるそうです。
<SGLT2阻害剤について詳しく>

副作用
もともと血糖値を下げる薬なので低血糖に注意しなければなりません。その場合は適宜ブドウ糖を服用するようにしてください。
しかし臨床試験では糖尿病の併発の有無と低血糖の発現率に差はほとんど無いとのこでした。
尿中にブドウ糖を排泄するため尿路感染には注意しなくてはなりません。日頃から清潔に保ち、もし変化があった場合にすぐに医療機関へ受診を促すべきだと思います。
水分を尿によって排泄するため脱水にも注意が必要です。適宜水分を補給するよう説明が必要です。
しかし、心不全の患者さんの場合水分制限をしている場合があります。脱水があった場合に水分摂取の可否は患者さんの状態によるとまでしか言えないそうです。
水分でなく塩分を制限することに重きを置く医師もいるそうです。
今回フォシーガにおける臨床試験ではeGFR≧30mL/min/1.73㎡の患者さんで行っているため30未満の患者さんへの安全性は確立していないです。
その他注意点
フォシーガは慢性心不全の適応をとりましたが、「慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」と記載がある通り第一選択で使用することはできません。
さらに慢性心不全の中でも左室駆出率が低下した心不全の患者に対する適応のため左室駆出率が保たれた患者さんへの有効性、安全性は保たれていません。
レセプト上では左室駆出率の測定日と結果の記載が必要とのことで病院は対応にひと手間必要になったイメージです。
左室駆出率が40%を切った場合にフォシーガの適応となり、治療中1回でも40%を切れば適応上はその後40%を上回っても問題ないです。
まとめ
慢性心不全に対して使用する場合は初回から10㎎で使用するため疑義をかける際適応を確認など注意が必要です。
服薬指導する際には水分制限などがされているかを確認し、脱水に対する対応策を患者さんと相談して決めておくとその後がスムーズだと思います。
慢性心不全は5年生存率が約半分を言われている非常に予後不良な疾患の1つになります。
そのため服薬コンプライアンスを高く保つことが予後を少しでも良くできる対策の1つになってくると思います!
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