大腸癌ガイドラインなどを元に自分のための備忘録として見返す用にまとめてみました。
大腸とは
人の消化管は口からはじまり肛門まで長い1本の管になっています。
その中で盲腸から結腸までの範囲を大腸と呼びます。
大腸の主な働きは小腸で栄養を吸収した泥状のものから水分を再吸収し、硬い便を作り出す消化器官になります。
大腸の構造
大腸は上図の通り部位ごとに名前がついています。
大腸の内側は粘膜でできています。それから幾重の層が重なった構造をしています。
そして大腸の周りにはリンパ管、リンパ節が張り巡らされており、大腸周辺の血管からの老廃物などを吸収してくれています。
大腸がんとは
大腸がんは大きく分けて腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌に分類されます。
その中で大部分をしめているのが腺癌です。
大腸がんの好発部位はS状結腸と直腸と言われており、大腸がん患者の大部分をしめます。
大腸がんの原因と予防
大腸がんの原因は生活習慣と深く関係しているといわれています。
・赤身肉やハム、ソーセージなどの加工肉
・高脂肪の食品の摂取
・喫煙
・飲酒
・肥満
食の欧米化により食事における脂質の割合が増えているのは有名ですがそれらに付随している部分が多いと思います。
予防としては上記の原因に対する対策を行うことが大切です。
・適度な運動を行い肥満体系を改善
・禁煙し節度ある飲酒にとどめる
・バランスのよい食事を意識して野菜など食物繊維の割合を増やす
大腸がんの症状
大腸がんでは初期の段階では自覚症状はほとんど見られません。そのため40歳以上の健常者の方には毎年定期的に検診することが推奨されています。
がんが進行してくるとだんだん下記のような自覚症状がみられます。
・下血
・血便
・便が残った感じがする
・便が細い
腫瘍が大きくなり大腸が閉塞されてくるとさらに下記のような自覚症状がみられることがあります。
・下痢、便秘の繰り返し
・腹痛
・おなかが張る
・貧血(慢性的な出血による)
ここで注意したいのが痔を持っている患者さんなどでは便に血が混ざっていてもそれが大腸がんによるものなのか分からない場合があるのでやはり定期的な検診が大切だと思います。
検査、診断
大腸がんには下記のような検査があります。
基本的には大腸がん疑いの患者さんは大腸内視鏡検査により確定診断を行います。
内視鏡には実際に見るだけでなく生検や治療ができるというメリットがあります。
ステージ分類
大腸がんのステージ分類は0~IVまでの5段階に分かれています。詳しくは下記にまとめています。
ステージ0:癌が粘膜の中にとどまっている
ステージI:癌が大腸の壁(固有筋層)にとどまっている
ステージⅡ:癌が大腸の壁(固有筋層)の外まで浸潤している
ステージⅢa:リンパ節に転移がある(1~3個)
ステージⅢb:リンパ節に転移がある(4個以上)
ステージⅣ:血行性転移(肝転移、肺転移)または腹膜播種がある
上記のステージ分類とは別に大腸壁の腫瘍の浸潤度により分類されています。
Tis:粘膜内癌
T1:粘膜下層に浸潤する癌
T2:固有筋層に浸潤する癌
T3:漿膜下層に浸潤する癌
T4a:漿膜を超えて浸潤する癌
T4b:漿膜を超えて他臓器まで浸潤した癌
治療
内視鏡治療
ステージ0~Ⅲでは上記のフローチャートに適応できるかを検討します。
浸潤の分類はこちら
内視鏡的切除の基準
・粘膜内癌、粘膜下層への軽度浸潤癌
・大きさは問わない
・肉眼型は問わない
内視鏡的切除の方法として下記の3つがあります。これらは腫瘍の大きさや形状によって選択されます。
ポリペクトミー
世の中で言われているポリープの切除はこれに当たります。
隆起した腫瘍にスネアと呼ばれる高周波を出すワイヤーを腫瘍に引っ掛けて焼き切ることによって切除します。(焼き切らずしめあげて壊死させる方法もあります)
EMR
EMRは粘膜にできた腫瘍に対して下の粘膜下層に生理食塩水などを注入することにより腫瘍を浮き上がらせます。
隆起させた腫瘍に対してスネアをかけて焼き切る施術になります。
後述するESDに比べて簡便に施術できますが広範囲のポリープなどだと一度でとりきれない可能性があるため20mm以下の小さいサイズが基本的には対象になってきます。
ESD
ESDはEMR同様粘膜下層に生理食塩水を注入し隆起させ、マーキング周辺をスネアを使わずに切り取ります。
ESDはスネアを使わずに広範囲を切除できるので腫瘍の範囲が大きい場合でも一度でとりきることができますがEMRに比べて手術時間が長くなります。
内視鏡治療後の経過観察
大腸癌治療ガイドラインより
手術治療
cは術前の臨床所見を意味します。
Nはリンパ節転移の有無でリンパ節転移があれば(+)D3まで切除を行います。
リンパ節転移が無ければ浸潤度に応じて切除範囲を決めます。
がん細胞を切除する際にリンパ節も切除して大丈夫なのかというQ&Aをよく見ますが、上記のようにがん細胞に対応した部分のリンパ節を切除するため問題ないといわれています。
術後化学療法(Adjuvant Chemotherapy)
術後補助化学療法はR0切除が行われた治癒切除例に対して再発抑制、予後の改善を目的に施行される全身薬物療法です。
術後8週頃までに開始することが望ましいとされています。
適応の原則は下記の通りです。
(1)R0切除が行われたStage Ⅲ大腸癌(結腸癌・直腸癌)。
(2)術後合併症から回復している。
(3)Performance status(PS)が0~1である。
(4)主要臓器機能が保たれている。
(5)重篤な術後合併症(感染症,縫合不全など)がない。
術後補助化学療法で保険適応となってるのは下記のレジメンになります。
オキサリプラチン(OX)併用療法 | CAPOX FOLFOX |
フッ化ピリミジン(FP)単独療法 | Capecitabine 5-FU+l-LV UFT+LV S-1 |
投与期間は原則6ヶ月に設定されています。
切除不能進行再発大腸癌に対する薬物療法
薬物療法を実施しない場合の切除不能進行再発大腸癌の生存期間中央値(MST)は約8ヶ月と言われています。薬物療法を行うことによりMSTは30ヶ月を越えますが治癒までには至るには難しい状況と言われています。
適応の原則は下記の通りです。
・病理組織診断にて結腸または直腸の腺癌であることが確認されている。
・治癒切除不能と診断されている。
・全身状態や、腫瘍臓器機能、重篤な併存疾患の有無により薬物療法の適応がある(fit)または薬物療法の適応に問題がある(valnerable)と診断される。
Fit は非高齢者と同じ標準治療を行える患者を指します。
Vulnerable は非高齢者と同じ標準治療を受けることはできないが何らかの治療を受けることができる患者を指します。
Frail は積極的な治療は行えない患者を指します。(緩和治療などをメインに行っていく)
RASが変異型の場合はCET(セツキシマブ),PANI(パニツムマブ)が使用できないため治療開始時に遺伝子検査を行います。
治療方針は上記の一次治療から始まり、OX、IRIに不耐、不応となった場合に二次治療、三次治療と進んでいきます。
- FOLFOX+BEV
- CAPOX+BEV
- SOX+BEV
- FOLFIRI+BEV
- S1+IRI+BEV
- FOLFOX+CET,FOLFOX+PANI
- FOLFIRI+CET,FOLFIRI+PANI
- FOLFOXIRI+BEV
- Infusional 5-FU+l-LV+BEV
- Cape+BEV
- UFT+LV+BEV
- S-1+BEV
- CET or PANI
OXを含むレジメンに不応・不耐となった場合
- FOLFIRI+BEV
- CAPIRI+BEV
- FOLFIRI+RAM
- FOLFIRI+AFL
- S-1+IRI+BEV
- IRI+BEV
- FOLFIRI+CET,FOLFIRI+PANI
- IRI+CET,IRI+PANI
- Pembro
IRIを含むレジメンに不応・不耐となった場合
- FOLFOX+BEV
- CAPOX+BEV
- SOX+BEV
- FOLFOX+CET,FOLFOX+PANI
- Pembro
OX,IRIの両方を含むレジメンに不応・不耐となった場合
- (IRI+)CET,(IRI+)PANI
- Pembro
- (IRI+)CET,(IRI+)PANI
- REG
- FTD/TPI
- Pembro
まとめ
今回は診断、治療にフォーカスしてまとめてみました。
癌領域はアップデートされるスピードが早いので注意深く調べていきたいと思います。
各レジメンについても今後調べていきたいとおもいます。
コメント