骨粗鬆症の病態と治療について薬剤師視点でまとめてみました。
この分野は同種同効薬が多く患者数も多い疾患の1つなので覚えることが多いですがポイントをおさえて覚えていきましょう。
骨粗鬆症とは
まず最初に骨粗鬆症を予防する最大の目的は骨折を予防することによりQOLの維持に努めることです。
WHOの定義では
「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」
となっています。
もう少し分かりやすく説明すると様々な理由(後述します)により骨が弱くなり骨折しやすくなってしまう状態を骨粗鬆症といいます。
骨粗鬆症の診断などに用いられるものに「骨強度」というものがあります。
これは骨密度と骨質を総合したもので骨強度の7割を骨密度が占めています。
よって骨密度の測定が診断の中で重要な1つの項目になります。
骨密度の項目として「若年成人平均値(YAM)」があります。
脆弱性骨折のある例では80%未満
脆弱性骨折のない例では70%未満
上記に当てはまった場合に骨粗鬆症とする基準が設けられています。
骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症の原因は非常に多岐にわたります。
加齢や閉経などによる原発性骨粗鬆症
様々な疾患から来る続発性骨粗鬆症
他にも骨に関わる疾患により骨粗鬆症になる場合もあります。
骨粗鬆症に大きく関わるのが骨リモデリングという新陳代謝機構です。
骨は常に新陳代謝を繰り返しています。そこに関わってくるのが骨芽細胞と破骨細胞です。
骨の形成(骨形成)を担っているのが骨芽細胞、骨の分解(骨吸収)を担っているのが破骨細胞です。
通常であれば骨形成と骨吸収の量は等しいとされていますがこのバランスが崩れると骨粗鬆症につながります。
骨折好発部位
骨粗鬆症で骨折する部位は大腿骨近位部、椎体、その他の部位に分けられます。
大腿骨近位部骨折
大腿骨は骨盤から出ている骨で太ももに当たる部分です。
この大腿骨の頚部、転子部、転子下のいずれかを骨折するのを大腿骨近位部骨折といいます。
股関節にあたる部分の骨折のため骨折した時は歩けなくなるほどの痛みが出るといわれています。
骨折した多くの場合は手術の適応になります。
さらにその後は薬物療法で骨粗鬆症の治療が開始される場合が多いです。
椎体骨折
椎体は一般に背骨と呼ばれている部分になります。
骨粗鬆症になると物を持ち上げた時だけに限らず中腰などでも骨折する場合があります。
日常でそれらを気をつけていてもしりもちなどをついてしまうと圧迫骨折を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
軽症の場合はコルセットなどを使用します。
重症の場合は手術の適応となることがあります。
薬物療法
薬物療法を開始する際はガイドラインの上記を参考に判断されます。
薬物の種類は多岐に渡り、性別なども関連してきます。
主な薬剤の作用点は上図の通りです。
前提として血中Ca濃度が下がった場合は血中Ca濃度を上げる作用が働きます。(骨吸収↑、小腸からの吸収↑など)
逆に血中Ca濃度が上がった場合は血中Ca濃度を下げる作用が働きます。(骨形成↑、小腸からの吸収↓など)
Ca製剤
Caを含んだ製剤を内服又は点滴することにより血中Ca濃度を上昇させます。
乳酸カルシウム
塩化カルシウム
活性型VD₃製剤
小腸からのCa²⁺吸収を促進、図には表示しませんでしたが腎臓からのCa²⁺再吸収も促進することにより血中Ca²⁺濃度を上昇させます。
上記によりパラトルモンの分泌が抑制され、骨吸収が抑制されます。
他にも骨芽細胞に作用して骨形成を促進します。
アルファカルシドール(アルファロール)
エルデカルシトール(エディロール)
カルシトリオール(カルデミン)
VK製剤(ビタミンK)
骨基質たんぱく質であるオステオカルシンに存在するグルタミン酸残基をカルボキシ化(Gla化)することによりCa²⁺の骨に対する親和性を上昇させることによりカルシウムの沈着を促進します。
上記の反応はビタミンK依存的に行われているためビタミンK製剤を投与することにより骨形成が促進されます。
さらにカルシトリオール共存下においては骨の石灰化を促進、オステオカルシン量を増加させる作用があります。
メナテトレノン(グラケー)
※オステオカルシンは薬剤師国家試験でも出題されているのでしっかりおさえましょう!
副甲状腺ホルモン製剤
副甲状腺ホルモン(パラトルモン)は通常であれば破骨細胞の活性し、骨吸収を促進してしまいますが、間欠投与(間をあけて投与する)することにより結果的に骨形成が促進されます。
テリパラチド(フォルテオ、テリボン)
フォルテオは1日1回20μg投与で間欠投与に見えませんが半減期が0.708時間と非常に短いため間欠投与と同じ効果を発揮しています。
テリボンは1週間に1回56.5μg投与します。
テリパラチドの共通の注意点としては骨腫瘍性病変所見が認められたため投与期間は24ヶ月(2年)と設定されています。
ビスホスホネート製剤(BP製剤)
骨の主成分であるヒロドキシアパタイトに高い親和性を示し、破骨細胞に取り込まれます。
取り込まれることにより破骨細胞のアポトーシスを誘導し骨吸収を抑制します。
アレンドロン酸ナトリウム水和物(ボナロン、フォサマック)
イバンドロン酸ナトリウム水和物(ボンビバ)
エチドロン酸二ナトリウム(ダイドロネル)
ゾレドロン酸水和物(リクラスト)
ミノドロン酸水和物(ボノテオ、リカルボン)
リセドロン酸ナトリウム水和物(アクトネル、ベネット)
内服のビスホスホネート製剤は服用が起床時であり服用後30分は横にならないなど注意が非常に多い薬剤のため注意が必要です。
カルシトニン製剤
破骨細胞のカルシトニン受容体に作用することによって骨吸収を抑制します。
エルカトニン
エストロゲン製剤・SERM
エストロゲンはカルシトニンの分泌を促進を示します。
エストラジオール
SERMは選択的エストロゲン受容体調節薬の略で骨のエストロゲン受容体へ作用し閉経後のエストロゲン分泌の低下を調整します。
エストロゲン様作用により骨吸収を抑制します。
ラロキシフェン(エビスタ)
バゼドキシフェン(ビビアント)
エストロゲン製剤、SERMに共通しているのは適応が閉経後骨粗鬆症であることす。
また、副作用に静脈血栓症があるため注意が必要です。(既往のある方は禁忌になります)
デノズマブ(モノクローナル抗体製剤)
破骨細胞の分化、誘導に関わる経路にRANK/RANKL経路があります。
そこに関わりがあるRANKLに結合することによりこの経路を阻害することにより破骨細胞による骨吸収を阻害します。
デノズマブ(プラリア)
通常では低カルシウム血症を予防するためデノタスチュアブル配合錠を併用します。
まとめ
骨粗鬆症を治療する目的は骨折を予防することによりQOLの維持に努めることです
骨粗鬆症には加齢などによる原発性骨粗鬆症と別の疾患から二次的に起こる続発性骨粗鬆症がほとんどを占めています。
骨粗鬆症の診断に用いられるのは「骨強度=骨密度+骨質」
骨密度の基準としてYAM(若年成人平均値)が用いられます。
脆弱骨折歴ありYAM<80 脆弱骨折歴なしYAM<70 に当てはまったら骨粗鬆症の診断基準のひとつになります。
骨折好発部位は大腿骨近位部(股関節部分)と椎体(背骨)の二箇所が大多数を占めます。
薬剤は上記の表をまず覚えてから細かい薬品名を覚えていくと楽だと思います。
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