化学療法の初回指導をしている薬剤師の方々で説明するときに患者さんから開口一番に「これは髪が抜けますか?」と聞かれることは少なくないと思います。
やはり体調に関する副作用と同じくらいに脱毛は見た目に影響するため気になる部分ではあります。
特に女性の場合は「髪は女の命」と言われるようにしっかりケアしていかなくてはならないポイントのひとつになります。
私自身も指導用パンフレットに主に記載のある部分しか理解が無かったので今回調べてみました。
そもそも「脱毛」って?
化学療法に用いられる薬剤のには「細胞障害性抗がん剤」「分子標的薬」などに分類されます。
その中で細胞障害性抗がん剤は腫瘍の細胞分裂に着目した薬剤であり、細胞分裂を阻害することで抗がん剤として効果を発揮します。
しかし大きなデメリットとして正常な細胞も障害されてしまいます。
障害作用は細胞分裂が早い部分に強く出ます。その1つが毛髪に存在する毛母細胞です。

毛髪は爪などと同じく毛母細胞で毛髪が作られどんどん押し出されて毛髪となっていきます。
この毛母細胞が障害されるため脱毛につながってしまいます。
脱毛の対策
脱毛といえば頭髪のイメージがありますが場合によっては全身の毛髪が抜け落ちます。そのためそれぞれの対策を知っておく必要があります。
これらをすべて初回に説明すると情報量が多いため脱毛する旨は初回に説明し、クールが進むにつれ一緒に経過を観察しながら必要な対策をとっていく必要があると思います。
それぞれの対策や指導時に注意したいポイントを自分なりに考えてみました。
頭髪
頭髪はやはり見た目にとても大きく影響がある部分になります。
老若男女問わず真っ先に気になる部分になります。
そのため内容を話す前に化学療法が終了して3~6か月ほど経つとまた生え始め、1年もするとほぼ今の髪と同じ状態に戻ります。(長さなど個人差ありますが)という話をさせていただいています。
もし長髪の患者さんであれば投与前に少し髪を短くして違和感を少しでも軽減するなどの対策も効果的です。
薬剤投与が始まる前からパーマやカラーなど刺激物は控えるように説明し、薬剤投与後に育毛剤などを使用しても効果が無いためほかの対策を一緒に考える必要があります。
抗がん剤が始まると約2~3週間で脱毛が始まります。
そこからだんだん毛量が減っていくため必要に応じて帽子、かつら、付け毛などを提案していきます。
あんまり気にしないという方であっても頭皮に直接日光が当たるのは防ぎたいです。
そのため外出時には帽子などを被るよう説明する必要があります。
その他の部位
頭髪以外に注意が必要な部位として「眉毛」「鼻毛」「まつ毛」があります。
一見どうでもいい部位に見えますがしっかり理由があって生えているため対策をきっちりとっていく必要があります。
眉毛
眉毛は額まわりの汗が目に流れ落ちないように生えています。
そのため脱毛により眉毛がなくなると目に汗が入りやすくなってしまうため注意が必要です。
もし眉毛が抜けてしまい、夏場など汗をかく場面に遭遇した場合はバンダナを額に巻くなど対策を行うと目に入りにくくなります。
鼻毛
鼻毛は体内へ異物が入らないように生えている毛です。
これが無くなるとほこりなどを普通に吸ってしまい風邪をひきやすくなったりと体調などにも影響が出てきます。
一般的な対策としてはマスクを着用し異物を体内に入れない努力を行うのが大切です。
さらには乾燥しやすくなるため寝る前など鼻の内側にワセリンなどを塗るのも対策としては効果的の場合があります。
まつ毛
まつ毛は目に異物が入らないように生えています。
まつ毛が抜けることにより目に異物が入り、結膜炎など炎症の元になってしまうため注意が必要です。
さらに薬剤によりまつ毛が切れて目に入る可能性もあるため目がチクチクするときはこすらずに目を洗うように説明する必要があります。
脱毛に関わる薬剤
抗がん剤の用量や個人差により一概には分類されていないですが大まかに「高度」「中等度」「低度」に分類されています。
高度はほぼすべて脱毛する頻度が高く、低度は抜けても分からない程度の薬剤に分類されています。
高度に分類される薬剤として下記のような薬剤があります。
アルキル化薬(シクロホスファミド、イホスファミド)
微小管阻害薬(ドセタキセル、パクリタキセル)
アントラサイクリン系(ドキソルビシン、エピルビシン) など
低度には下記のような薬剤があります。
フッ化ピリミジン系(TS-1、カペシタビン、フルオロウラシル など)
分子標的薬 など
まとめ
脱毛は先述したとおり誰もが気になる副作用です。
薬剤によって頻度の違いや頭髪だけでなく他の毛髪が抜ける可能性もあることに注意が必要です。
化学療法の初回指導ではなるべく不安を与えないようにしつつ内容をどのように伝えるかが課題になってくると思います。
さらにコースが進むにつれて実際に脱毛が始まった場合にどのような対応策をとっていくのかを患者さんと話し合いながら考えていけるのが理想だと思います。
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